作業療法士:OT pagumaru's diary
日々の臨床と研究のことを書いていきます。It's been over 15 years since I got an occupational therapist license in Japan. I completed the master's program at graduate school. I would like to write on this blog what I thought about doing clinical occupational therapy in Japan. I'm learning English.
作業療法

作業療法って何をするの?  「作業療法の定義」と「私の臨床」について思うこと。

私は、急性期から生活期まで、10年以上臨床をしているけれど、

作業療法を調べれば調べるほど、作業療法ってなんなのかわからなくなる一方です。

結局、修士を取得しても、やっぱりわからない。作業療法は好きだけど、上手く説明できない。

身体機能、認知機能、生活動作、。。。一体何の専門家なのでしょうか。

「意味ある作業」っていうけれど、それって、一般の人に通じる用語なのでしょうか。

私は「意味ある作業」を患者さんと一緒に見つけていくのが好きだし、とても大切だと思っています。でも、「意味ある作業」が、どれだけ一般の人に伝わるのか、私は疑問に思います。

「意味ある作業」を考える前に、「作業療法ってなに?」という疑問から少しづつ、整理していきたいと思います。

1965年にできた法律、理学療法士及び作業療法士法。

これには、
作業療法とは,身体又は精神に障害のある者に対し,主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため,手芸,工作,その他の作業を行わせることをいう.」http://www.jaot.or.jp/wp-content/uploads/2019/02/OTguideline-2018.pdf

と、書いてあります。

手芸とか、工作をするのが、作業療法なんだ!と思うのは当然だと思います。

私も大学入学前、「陶芸したり、絵をかいたり、手芸したりするのが作業療法なんだ!面白そう!」と思って、受験したのを覚えています。

そしたら、2010年、この「手芸,工作」という文言から,作業療法が「医療現場において手工芸を行わせること」といった認識が広がっているので、「作業療法」の具体的な治療場面が追記されました。
・移動,食事,排泄,入浴等の日常生活活動に関するADL 訓練
・家事,外出等のIADL 訓練
・作業耐久性の向上,作業手順の習得,就労環境への適応等の職業関連活動の訓練
福祉用具の使用等に関する訓練
・退院後の住環境への適応訓練
発達障害高次脳機能障害等に対するリハビリテーション

http://www.jaot.or.jp/wp-content/uploads/2019/02/OTguideline-2018.pdf

あれ?手工芸・工作、どこにいった???

しかも、1965年に出来てから、45年も経っている!!

45年の間に、作業療法の治療内容が変わったのか?

なんで変わったの??、45年前は、何をしていたの?

歴史の話は、また今度調べてみようと思いました。

確かに、手工芸ばっかりやっているわけではないし、

退院にむけて、自立した生活を送るためのリハビリテーションなので、

この説明は間違っていないんだけど、

訓練感が強いなぁと思っています。

クライエント中心主義で、クライエントの行いたい作業を遂行するためのリハビリテーションという感じが、見えないなぁと思っています。法律だから、全てを入れるのって大変なのかもしれませんね。

今度は、日本作業療法士協会の定義

 1985 年に定めた作業療法の定義

 作業療法とは,身体又は精神に障害のある者,またはそれが予測される者に対し,その主体的な生活の獲得を図るため,諸機能の回復,維持及び開発を促す作業活動を用いて,治療,指導及び援助を行うことをいう.

病院内での作業療法だけではなくなってきたことから、2018年に改訂されました。

作業療法は,人々の健康と幸福を促進するために,医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる,作業に焦点を当てた治療,指導,援助である.作業とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す.

(註釈)
作業療法は「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念と学術的根拠に基づいて行われる.
作業療法の対象となる人々とは,身体,精神,発達,高齢期の障害や,環境への不適応により,日々の作業に困難が生じている,またはそれが予測される人や集団を指す.
・作業には,日常生活活動,家事,仕事,趣味,遊び,対人交流,休養など,人が営む生活行為と,それを行うのに必要な心身の活動が含まれる.
・作業には,人々ができるようになりたいこと,できる必要があること,できることが期待されていることなど,個別的な目的や価値が含まれる.
・作業に焦点を当てた実践には,心身機能の回復,維持,あるいは低下を予防する手段としての作業の利用と,その作業自体を練習し,できるようにしていくという目的としての作業の利用,およびこれらを達成するための環境への働きかけが含まれる.

https://www.jaot.or.jp/about/definition/

日本作業療法士協会

注釈長っ!!

私は、作業療法士なので、「作業」「作業」って何回も出てくることに違和感がないのだけれど、一般の人はこれを読んで理解できるのだろうか??

私は、以前、作業療法士でも、医療系でもない人に「作業」って言葉で説明したら、『「作業」ってなに?「軽作業」「デスクワーク」「仕事」って意味で使っているの? わかりずらいんだけど』と言われたことがあります。

そうだよねー。作業って、わからないよねー。

活動なんでも含んでいるから。1つの活動の専門ではありませんっていってるのかな?

活動全部を専門としているって、素晴らしいことかもしれないけど、

それって、”専門”っていうのでしょうか。

1つの活動を”専門”にしている集団よりは絶対専門性に劣るのではないでしょうか。

でも、それでは、作業療法の専門性が無くなってしまうのでは??

やっぱり、きちんと説明したい!! 

最後に、私が1番わかりやすいと思っている、
世界作業療法士連盟による「作業療法」の定義(2012 年)

作業療法は,作業を通して健康と安寧を促進することに関心をもつ,クライエント中心の健康関連専門職である.作業療法の主な目標は,日常生活の活動に人々が参加できるようになることである.作業療法士は,人々や社会の人と一緒に,彼らがしたいこと,必要なこと,期待されることに関する作業ができるようになることをしたり,彼らの作業への関わりをサポートするために環境や作業を修正したりすることで,アウトカムを達成する.

https://www.jaot.or.jp/wfot/wfot_definition/

作業療法士協会

日常生活の活動に参加できるように。

やりたいことができるように。

必要とされていることができるように。

期待されていることができるように。

サポートしますよってことかな??

私は臨床で、成人や高齢者を対象に作業療法を行っているので、

怪我や病気によって、加齢によって、

「何もできない」「何もやりたくない」

と思っている人に、

身体機能・認知機能の評価をした上で、一緒にできることを探したいと思っています。

ある部分は障害されてしまったのかもしれませんが、それはその人全部ではなくて、

いい所もたくさんあって、でも、自分では気づけないから、気づかせてあげられるように、話を聞いたり、運動をして自分で体を動かしてもらったり。

まずは、今の自分に「何ができるか」と、「何がしたいか」を一緒に探すことができたらいいのではないかと思っています。

もちろん、身体機能や認知機能のより良い回復方法を提供することは大切ですが、前と全く同じになるというのは、難しいことが多いような気がします。医療者からみれば、軽症といわれる人にとっても、やはり、前の自分との違いを話す人は多いです。

「何がしたいのかを見つけて、サポートすること」が、専門性と言っていいのか私はよくわかりません。

医療に携わる職種であれば、全員が考えていることではないのだろうか。

臨床心理士さんとの違いは?ヘルパーさんとの違いは?ボランティアとの違いは?

理学療法士との違い、言語聴覚士との違いは?看護師との違いは?

作業療法を知らない人にも作業療法士の専門性をわかってもらえるのだろうか。

作業療法は、範囲も広く、活動内容も様々で

それが面白さでもあって、やりがいでもあるんだけど、

作業療法で何が改善するかがみえにくくなってしまっているのではと思ってしまいます。

「やりたいこと」がつまり、意味ある作業ってことなのでしょうか。

それなら、「やりたいことを見つけていく」ことは、作業療法の専門性といっていいのでしょうか。

作業療法介入が、具体的に何をアウトカムにしているのか、もう一度考えながら臨床していきたいと思います。